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Vol.12
パライバトルマリンの
品質、価値、処理について

南国の透き通った海の色のようなネオンブルーの色合い

[写真]南国の透き通った海の色のようなネオンブルーの色合い

「パライバ」この言葉は、宝石愛好家にとって特別な魅力があります。

パライバトルマリンは、鉱物学的には青や緑などの色彩を放つトルマリンの一種です。

その色は、南国の透き通った海の色のような緑青です。

そしてその個性的な色と共に魅力を引き出しているのが、パライバトルマリン独特の鮮やかなテリです。

一般的にネオン感という表現が使われています。

その独特な色合いとテリの秘密は、内包されたCu銅とMnマンガンによるものです。

あまりにも世界的な人気に産出量が追いつかない状況だったのですが、その後、パライバ州の隣のリオ・グランデ州、そして2000年に入りナイジェリア、モザンビークでも採掘されるようになりました。

しかし、良質で大粒な逸品の産出量は少なく、また供給もまだまだ不安定で、早くも幻の宝石となりつつあります。

パライバトルマリンの品質の見分け方

[写真]ライバトルマリンの品質の見分け方

パライバトルマリンも他の宝石と同じように、色・透明度・輝きの3要素で品質評価されます。

その中でもパライバにおいて最も重要となるのが「色」です。

ネオンブルーと呼ばれる独特な色合いが、パライバトルマリンの特徴の一つです。

評価の高い一品を選ぼうとするなら、まず第一にその色の美しさを重要視する必要があります。

彩度の高い鮮やかなネオンカラーは、見た人に鮮烈な印象を与えます。

パライバトルマリンの色相は、緑青、青緑、緑、青、および青紫ですが、その中で評価の高い色相はより緑味の少ない緑青〜青〜青紫です。

また、明度・彩度はいずれも高い方が評価が高くなります。

鑑別書では石の品質を知ることはできませんが、パライバトルマリンについてはその分析結果からいくつか分かることがあります。
その1つは、「色の濃度」です。
成分分析表のCu銅とMnマンガンの値が高くなるほど色が濃くなる傾向にあるためです。
色については基本的には濃いほうが評価が高くなりますので、Cu銅とMnマンガンの値が一つの目安となります。
ただし、注意が必要なのは色の評価は濃度だけでなく、明度と彩度も重要です。
最高の濃度を持つ色合いですが、明度がとても低く暗い石であれば魅力も半減です。
つまり分析報告書の値は品質評価の一助にはなっても、決定的なデータとしては使うことができないということです。

次に重視したいチェックポイントは、透明感です。

透明感が高く、かつテリが良いものが一級品のパライバトルマリンです。

内包物は、他の色石同様に少ないほどに評価は高くなりますが、パライバトルマリンのほとんどは内包物が多く存在しますので、石の美観を損ねてしまうようなインクルージョン以外は、特別重要視する必要はなく、あくまでも石全体のもつ美しさの印象を大切にすると良いでしょう。

また、重量(サイズ)は大きいほど価値は上昇します。

そして最後に、パライバトルマリンは産地により価値、品質が大きく異なる宝石です。
具体的にはアフリカ産よりブラジル産のものが評価が高いとされています。
理由としては、品質評価、特に色について評価の高い石がアフリカよりもブラジルから産出されるためです。
また、産出量が圧倒的にブラジルの方が少ないということから希少性の面でも違いがあります。

一方で重量(サイズ)はアフリカ産のほうが比較的大きな石が産出されています。
中にはアフリカ産でもブラジル産に負けないよなネオンカラーを持つ石も産出されることがありますので、どちらの産地が優れているかということは一概に言うことはできないでしょう。

パライバトルマリンの産地

パライバトルマリンの産出地として覚えておきたいのは、宝石名ともなったブラジルのパライバ州、サンドンデ・パターリャです。

この鉱山から1987年に偶然発見され、以後、唯一のパライバトルマリンを産出する鉱山としてその名が知られることとなりました。

しかし、順調に産出が続いたのは、わずか1年でした。

その間にも世界のパライバトルマリン人気は上昇を続け、そのため常に需要が供給を上回り、価格の高騰へとつながっていきました。

このまま幻の宝石になるのではとうわさされていましたが、1990年にパライバ州の隣に位置するリオグランデノルデ州の2つの鉱山にも、パライバトルマリンが眠っていることが分かりました。

しかし、不思議なことに同じ山脈の鉱山であるにもかかわらず、リオグランデノルデ州のパライバトルマリンはパライバ州産と比較すると、色の薄いものが多いという特徴があり、その結果、良質のパライバの安定供給は不可能となりました。

その後、2001年に入りアフリカのナイジェリアで、2005年にはモザンビークでもパライバトルマリンが産出されることが分かり、注目を浴びることとなりました。

アフリカ産パライバトルマリンの特徴は、ブラジル産パライバトルマリンに比べ、色の薄いブルーがほとんどでしたが、中には良質の美しいものも産出されました。

パライバトルマリンの処理について

パライバトルマリンもルビーやサファイア、エメラルドと同じように処理が施されることがあります。
具体的には加熱処理、時として含浸処理が施されることがあります。
しかし、コランダムに比べて新しい宝石であることや、加熱の温度も比較的低いということからその分析は難しいことが多いのが現状です。
国内の鑑別機関では「通常、加熱されています。」という文言が記載されて、実際に加熱されているのか否かの分析は行っていません。
一方でGIAでは、明確に加熱の痕跡がない石には「加熱の痕跡なし」加熱の痕跡がある石には「加熱」というコメントが記載されますが、実際には「現時点では色の起源は判定不能」というコメントが記載されることが多くなっています。
つまり現時点の鑑別技術及び石のサンプルの範囲では加熱処理がされているか否か、また人為的か自然界の中で生じたものなのかの判断が難しいということです。

パライバトルマリンの類似石について

パライバが人気ですので良く似たカラーの石も登場しています。
以下のようなものもありますから、「パライバ」という単語に惑わされず、商品情報や購入店では確認を怠らないよう注意が必要です。

1)アパタイト
天然石です。硬度と靭性が低い石のため加工するには不向きですが華やかさがあります。
2)パライバ ベリル
合成ベリル
3)パライバ トパーズ
無色のトパーズにコーティングをしてもの
4)パライバ クォーツ
ロッククリスタルにコーティングしたもの
5)エリナイト
合成スピネル

これまでパライバトルマリンについて述べてまいりましたが、最後にパライバトルマリンを購入する前のポイントについて書きます。
ポイントとして言えることは「どのようなパライバが欲しいのか」ということです。
色、大きさ、希少性などの中からどこにポイントを置くか。
色は淡くてもよいので彩度が高く、サイズの大きな石が良いということであればブラジル産よりもアフリカ産の中からお選びいただくほうが良くなります。
小さくてもよいから鮮やかなネオンカラーの石をお探しであればブラジル産のものからお選びいただくことになるでしょう。
全てを兼ね備えたものはなかなかありません。
自分がどのようなパライバトルマリンに魅力を感じるのか、納得できるのかを考えながらお選びになることをお奨めします。

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